月夜の誓い(11/13/2022)

「いつだって思ってます、これが最後の恋だって。」

いつしか見た、古いドラマの一台詞が、その時脳裏によぎっていた。

この台詞の裏にどんな意味があったのか、今でも全てはわかっていない。

ただ、恋をするたび、そうありたいと思うのは、私の中でもそうだった。

 

恋を失うことは、辛いことだ。だからこそ、最後にしたいと思うのかもしれない。

恋を育てるのには、時間が要る。だからこそ、最後にしたいと思うのかもしれない。

 

私は、その人に最も幸せになってほしいからこそ、最後にしたいのだと思う。

そこに私がいたいというのもあるのだが。

 

だからこそ、今度こそ、幸せにさせてみせる。

そう、己の心に誓った。

 

 

 

先週の平日のことを思い出してみる。

相変わらずな日常だった。相変わらずの感想だと思う。ただ、仕事が山場を迎えている以上、そこに熱中せざるを得ないのは、仕方ないことだと思った。

そういえば、皆既月食があった。その夜は、同期に新しいお店の開拓を手伝ってもらっていた。面白い月だったと思う。すぐさま、その人にメッセージを送った。月が綺麗だねと。純粋に送りたかったのもあるし、ちょっと含みを持たせたかったのもあった。ご飯屋を探している時に返信が来た。その日は個人経営のイタリアンに行ったのだが、とても美味しかった。お店の腕に、ちょっとした気持ちのスパイスが乗っていたからだろうと、今では思う。

 

 

そして、昨日のことを思い出す。

朝5時。平日より若干遅めに起きて、身支度をする。今日は、朝に立川の公園に、友人2人と紅葉を見に行く予定になっていた。事情があって、その予定は昼までとなった。融通を効かせてくれた友人には、本当に頭があがらないなと、今では余計に思う。

2人を道中で拾い、公園に向かった。綺麗な紅葉が入園者を迎えていた。今年の夏にも、向日葵を見に来たことがあったが、その時よりも人は格段に多かった。夏と同じくレンタサイクルを利用して園内を駆け回る。紅葉が綺麗な自転車道を走り抜けるのは、なんとも気持ちがよかった。友人と話しながら、ちょっとふざけながら走るのもまた1つの醍醐味だった。

昼時。近くのパスタ屋に行った。自分が頼んだのは明太子パスタ。自家製の、イカスミが練りこんであるパスタに、明太子のクリームがからんだ、美味しいパスタだった。友人はどちらも牛すじが煮込んであるパスタだったが、それも美味しそうだった。昼食後は、事情があって友人たちを立川駅に降ろして、自分は家へと急いで車を走らせた。そう、別の用事があるのは自分だった。付き合ってくれた友人たち、本当にありがとう。

 

そして時刻は15時。自分の最寄り駅で待ち合わせだった。待ち合わせた後、歩いて40分。公園に着いた。今日の目的は、夕日を見ること。景色が綺麗な時間に合わせて移動した。夕日はとても綺麗だった。公園は、相手が良く行く場所らしかったが、いつも夜遅くに行くらしく、夕方に行くのは初めてと言っていた。だから、色々な新しい発見があったらしく、楽しそうにしていた。自分も新しい場所の開拓が出来て楽しかった。

夕日を見た後、近くの展望台に足を運んだ。そこそこ高くて、見晴らしが良かった。地上からでは見えないけど、結構近くにあるものだったり、夜の光が織りなす綺麗な景色を見つけるのは楽しかった。

時刻は17時15分ぐらい。その後の予定はなかったが、丁度いい時間だと思い、一緒に夕食を食べに出発した。お店を決めるのに時間がかかってしまい、入ったのは、駅ビルの中のちょっと奥にある居酒屋だった。相手はいっぱい食べるタイプではなかったので、注文は控えめにした。お酒は、お互いに飲まなかった。居酒屋だったのに、2人合わせて4000円程度。いつもの半額程度でちょっとびっくりした。まあ、そのぐらいしか食べていないのだが。

そして、時刻は20時。相手が公園が好きだと言っていたので、自分もあまり行ったことのない、ちょっと大きい公園に行かないかと誘った。是非とのことで、一緒に公園に向かった。その公園は、夜ということもあって、閑散とはしていたが、ランニングをしている人や、ベンチに座っている学生やカップルが散見された。その公園には大きな池があった。その池の周りにベンチがあった。池を一緒に見ながら周囲を歩き、月が綺麗に池に映っているところのベンチに座った。ベンチでは今日の話を振り返っていた。そして、水面に浮かぶ月の揺れが止まった時、一つの言葉を相手に投げた。

 

 

──────付き合ってみないか、と。

 

 

そう、告白をしたのだ。

正直、自分でも早いタイミングで踏み切ったなとは思った。

だが、先週の土曜日に最初にあった時点で、自分の腹は5割弱ぐらいは決まっていた。その時は、他に新しく会う人もいたし、すぐに判断するのは良くないという気持ちがあったから、その程度の割合だった。そして、この1週間と昨日、その期間を経て自分の腹は決まっていった。友人に、決まっていた予定をわざわざ調整してもらったこと。皆既月食の話をその子にだけ送ったこと。そして、一緒に今日過ごした時間のこと。これだけあれば十分だと思った。そこに変な期間を設けるのが嫌だった。

とはいえ、かなり不安ではあった。

いくら自分がそう思ったからとはいえ、短い期間しか会っていない以上、相手が自分をその期間でどう思っていたのかが分からなかったからだ。

そして、彼女からとの会話が再度始まる。自分のことは、お兄さんみたいだと言われた。色々聞いてくれるという意味もあったし、他の意味もあってのことらしかった。後は、また会えたら良いなとは思ってくれていたらしい。それは純粋に嬉しかった。ただ、勢いで返事をしてしまっていいのか、それが分からないとも言われた。

その時、自分はこう話した。確かに、自分も勢いで言った節はある。だが、それは決して遊びではなく、真剣だ、と。そして、貴女のことをもっと知りたいからこそ、話をしたのだ、と。

そして彼女は、「自分はネコを被っているかもしれないが、それでもいいのか」と自分に言った。それは、お互い様だと、自分は言った。ネコを被っているつもりは毛頭ないが、知らずのうちに被っているかもしれないと。そして、自分は被ったものを外した貴女を見たいとも言った。それは本心だった。

そして少し会話をして、そして最後に、彼女から告げられた。

 

 

──────よろしくお願いします、と。

 

 

そしてそこからまた話をして、その公園を後にし、それぞれの帰路へと着いた。

帰る道中、あるドラマの一台詞を思い出しながら帰った。

これから、また新しい恋が始まる。

次こそ、うまくいくように。そう自分の己の心に誓って、空を見上げた。

空には、まばらに見える星と、さっきまで公園で見ていた月が1つ。

心なしか、昨日より欠けているはずの月の輝きは、さっきよりも輝いているように見えた。

 

 

最後に、名言を1つ。

「誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」

by ウィリアム・シェイクスピア

 

 

それでは、よい一週間と始まりを。